採用側と求職者側との温度差

会議室

企業が求人を募集するにあたり、求める人材像・スキルなど様々な意向があろうかと思います。
最近お受けする企業からの求人募集に関する相談の中で、多い事例についてここでいつくか紹介致します。

≪多い相談事例≫

(1)自社HP、有料の求人媒体、ハローワークなどの無料職業紹介機関、有料職業紹介会社など、様々な
方法で募集をかけているのだけど全く反応がなく困っています。どこに問題があるのでしょうか?

(2)募集の出し方については、求人内容を見た方にとって夢があって希望が持てるような表現にしたりと
工夫しています。問い合わせはそこそこあるのですが、そこから先(応募・面接まで)に進展しない
ので苦労しています。

(3)採用しても2~3ヵ月ですぐに辞めてしまうし、ひどい時は数週間で退職したりと・・・
給料の設定なんかも、最低賃金よりも上に設定しているし、何が問題なのでしょうか?

ここに掲載した相談内容は数ある中のごく一部ですが、どこの企業も共通してこのようなニュアンスの相談
が多く見受けられます。

ただ、似たような相談内容でも、企業によって文化・歴史、社風、待遇、労働環境など様々ですので、一概
に『こうすれば解決する』という確信めいたものはありませんが、実際に相談内容を深く掘り下げてお話し
を聞いてみると、うまくいかない採用活動の『意外な共通点』があるようです。

実は、当社はこのような企業からの相談も多く受けているのですが、求職者からの転職相談もたびたび受け
ます。その際に私は必ず『求職者がどういう視点で企業の求人票を見ているのか?』または『どういう企業
に応募したいと思うのか?』について聞くようにしています。
そして、上記の企業からの相談事例に対応すべく、求職者がどう捉えているのかも調査してみましたので、
ここでいつくか紹介します。

例えば、企業からの相談のトップを占める上記の相談事例(1)では、
(A)長期間にわたり同じ求人を出し続けている

(B)給料の設定幅がやたら広すぎる、または設定が低すぎる(最低賃金より若干上など)

(C)残業時間の設定が曖昧または矛盾がある
※『残業時間』という項目があるのに未記載だったり、仕事の内容からみて明らかに『そんな残業
時間では足りないのでは?』というようなものだったり。

(D)お仕事内容が抽象的またはあたりさわりのない一般的な表記で、仕事の流れやポジションなどがイメ
ージできない

などです。

要するに求職者からしてみれば、曖昧な点や矛盾が多かったり、イメージしづらい仕事内容からは、『入社
後の不安』『企業に対する不信感』を抱いてしまうということなんですね。

解決策の一例としては
(A)自社HPであれば定期的に内容を見直したり、四方八方に募集を出しすぎない(経費もかかります)

(B)給料の設定幅が広いケースの場合、インセンティブを設けていることも多いため、どのぐらい結果を
出せばどのようになるのかなど、あくまで『一例』で良いので、イメージできる金額幅の表記にする。

(C)実態ベースの想定残業時間を記載する。

(D)『お仕事内容』は求職者が最も注目し、興味のある項目です。ここで『応募の是非』が決まるといって
も過言ではありません。入社後の仕事のイメージや、ポジション・期待されるポイントが想像しづらい
内容だったり、淡々と事務的な記載方法では誰も反応しません。どんな人に応募して欲しいのか、期待
する点はどこなのかを明確に記載する。

実際にはもっと奥深い問題点や解決策はあるので、あくまで一例として見て頂きたいのですが、要するに採用
担当者の方が『もし自分が求職者だったら、この求人内容を見てどう感じるか?』という客観的な視点で、求
人票を作って頂きたいのです。

『給料設定が低すぎる』という意見も多いのですが、これは個人の主観や生活環境でも違いますし、企業側の
状況によっても様々ですので一概には言えませんが、『うちはこれだけしか出せない』という一方的な意向だ
けを押し付けるのでなく、入社後に求める仕事のスキルや、受け入れる会社の体制や姿勢などももしっかりと
伝わる募集内容にしてください。

この点については『経営者の感覚になってしまった経営者の方』には特に認識しておいてもらいたいのが、
『雇う側と雇われる側の感覚には、そもそも根本的な次元の違いや大きな温度差がある』という点です。

ただ、経営者がいまさら『求職者の立場になってみて・・・』と考えることではないかもしれません。
しかし、これだけは忘れてはいけません。
会社を作ったのは社長かもしれません。しかし、会社が会社として機能し始めた瞬間から『会社は社長のもの
ではなく、社員のもの』であることを。そして『社員が支えてくれているから会社として成り立っている』と
いうことを。

また、マネージャークラスの方の本来の使命は、『社員が働きやすい環境を作ること』『社員が、会社として
望んでいる成果が出せるようなプロセスをマネジメントすること』です。

求人票の上での見せかけの企業概要やPRでは、求職者からすぐに見透かされてしまいます。
企業・求職者の双方にとって『WIN-WIN』の関係が構築できる採用活動を、当社はこれからも支援して
まいります。

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